出島できない(悲)

♣出頭ではなく出島

「私、来週しゅっとうするんだ〜」
「〇〇(上司の名)はただいましゅっとう中でして…」
なんていう会話が繰り広げられているのを聞いて、御蔵に来た当初はかなり驚いたもの。なぜって、「しゅっとう」と言えば「出頭」と変換されるのが普通だと思う。

 

「え?この人何か悪いことしたの?警察に行くのに何でそんなに楽しそうなの?」
「上司が出頭中って相当ヤバイ職場なの?」
と思ったのは、きっと私だけではない(と信じたい)。

 

程なくしてそれが「出島」と変換されることを知った訳なのだが。他の島でも使われているかは定かではないが、御蔵では内地、つまり本州に出かけることを「出島(しゅっとう)する」と言う。今やその表現が私にも当たり前になり過ぎていて忘れていたが、確かに初めて聞いた時は衝撃だった(上記参照)。(ちなみに辞書を引いてみたが、「しゅっとう」と引いて出てくるのは「出頭」のみ。日本語の正確な用法ではないようだ。)しかし思い返してみると、最初の職場の出勤表(全職員の名前が書いてあってそれぞれの動静がわかるもの)には、「出勤」「退勤」の他に、「外出」ではなく「村内」という欄と「出島」という欄があったし、旅行命令簿には、「出島日時」と「帰島日時」を書く欄も確かにあった(言うまでもなく「出島」の対義語が「帰島」)。

 

ここまで書いていて気になって調べたのだが、「帰島」「在島」「来島」の三つは辞書に載っているのに対し、「出島」だけは辞書に記載がない。

帰島 島に帰ること。*潮騒(1954)<三島由紀夫>七「この人間ぎらひの娘は、ひさびさの帰島を迎へて、島の人たちが話しかけるのがいやなのであった」

在島 島に滞在していること。〔日葡辞書(1603-04)〕

来島 よそから島にやって来ること。*流人島にて(1953)<武田泰淳>「私が三郎(さぼう)だった頃も、関西の商人がこの件で来島したが」

※以上全て、精選版 日本国語大辞典より

 

つまりは、昔の文学作品で誰も島の外に出ることを「出島」するなんて表現しなかったから辞書に載っていないだけの気もする。いや、もっと掘り下げると、昔は今みたいに気軽で簡単に(今でもそうではないのだけど、昔に比べれば大分お手軽になったということ)島の外に行くなんていうことはできなかったのだろうから、「起きる」「寝る」「食べる」と同列になりそうなレベルでの「出島する」という表現は存在しなかったのかも知れない。要するに、わりと最近の言葉なのかと。(ちなみに「しゅっとう」と打っても「出島」とは出ないので「でじま」とタイプしている。スー女なんていう言葉が世に出回る前から大相撲のおっかけをしていた私には、どうしても毎回「出る出る出島」が脳内に出現する。*出島=現・大鳴門親方、石川県出身)

 

ーなんていう語彙の話がしたかったのではなく、出島したかった私の話!出島できなかった私の話!を書きたかったのであって…。

X Japan愛

1ヶ月ほど前に突然ライブ開催のお知らせが。そう、私は泣く子も黙る?X Japanの大ファン。と、公言したことがあったかどうかは不明だが、小学生の頃にテレビで化粧をした髪の長いお兄さん(言わずもがなYOSHIKIさんですね)が超美しいピアノを弾いていて度肝を抜かれてからというもの、30年近く密かに追いかけていたのだ。自分も当時ピアノを習っていて、クラシカルでどちらかと言えばコンサバ系のイメージがあったピアノを、それと正反対のところにいる(見た目がね)バンドの人たちが演奏するなんて思いもしなかったので、子どもながらに、そのギャップに惚れたのだと思う。

 

とは言え、まだまだインターネットも無い時代。テレビで聴いたのが何の曲なのか調べる術もないので、近所のCD屋さんで、とりあえず売っているCDを買ってもらうのが精一杯。ミニバスの朝練で、前日に見たHEY! HEY! HEY!のX出演時のエピソード(カレーが辛いとか、シャワーが熱い、の神回)を言い合って笑ったことを、なぜか鮮明に覚えている。もちろんライブなんてもってのほかで、子ども時代にそんなお金もないし、そもそもチケットってどうやって買うの…というレベルの時代。そうこうしているうちに、私が中学生の時にXは解散、hideの他界…と色々あった。

 

そして時は巡り、高校を卒業した後通った留学準備学校の卒業式に、サプライズでToshIが現れたのだ。当時は彼が洗脳だ何だと騒がれていた時代。Xの時のビジュアルイメージとはかなり違ったが、何曲か引き語りをしてくれて、最後にはツーショット写真にも快く応じてくれた(写真は家宝)。

 

がしかし!やはり生涯一度で良いからYoshikiに会いたい。ライブに行ってみたい、という思いはずっと心のどこかにあった。10年ほど前に再結成したという話を聞いた時から、いつかライブに行こう!と密かに決意していた。

チケット当選

そして今回思いがけない形で突然のライブ予告。日にちを調べてみると、敬老祝賀会の前だけど、初日なら行けない日ではない!これは行くしかない!ということで抽選に応募。そして…

33,000枚ソールドアウトのチケットが当選!大人になって、自分でお金を稼げるようになって、子どもの頃から会いたかった人に会える!と超歓喜。しかも幼馴染が一緒に行ってくれることになるというダブル歓喜。

 

だったのだが…

台風発生

ライブは金曜日。日曜日は敬老祝賀会でフラのステージがある。木曜の貨物終了後、午後ヘリで出て、金曜ライブ後に船に乗るのはおそらく間に合わないだろうから、一泊して土曜朝の八丈行きANAーヘリで帰って来るという算段。あわよくば、ネイルもまつエクも付け直そう、などという邪な考えが良くなかったのか、ふと天気予報をチェックすると、

あれ…何かいる…。

いるね!確実に、奴が!

( ̄◇ ̄;)

これはこっちに来るやーつではないか…。ちなみに1枚目は風予報、2枚目は波予報。波予報が真っ赤な時、船が着くのはほぼ絶望的。この予報だと御蔵から離れているように見えるけど、台風のうねりの影響は数日前から入って来ることもある。もちろん、最初から船で出ようとは思っていないので、ヘリと飛行機を使うつもりだったのだけれど、どうも天気も良くなさそう(有視界飛行なのでヘリは雨や曇りに弱い&飛行機は風の影響を諸に受ける)。

 

うーん…これは最悪出られたとしても帰って来られないかも知れない…。帰って来られない=敬老会に出られない=フラのステージに穴を開けてしまう(いや、一人分詰めればいいだけの話なんだけど笑)。

 

嗚呼、あと一歩でYoshikiに会えるところまで行ったのに、今回はここで断念なのか…と悩むに悩んだ結果…断念しました

 

やはり台風は怖い。その間に家族と離れるのも不安。どういう動きになるかわからない。などなど、理由はいくらでもあげられるけど、神さまに「今回はやめておけば?」と言われた気がしたというのが本音。きっと今回ダメでも、近い将来、Xに会えるのかな、と。幸いなことに、ライブに一緒に行ってくれるはずだった幼馴染が、X好きの友人を見つけてくれて、その幼馴染の友人が同じくX好きのその人の友人と行ってくれることになった(ややこしいけど笑、友人の友人二人がライブに行ってくれた)。

♣蓋を開けてみれば

船はもちろん着かなかったけれど、乗るはずだったヘリと飛行機は通常運行。「あれ?行けたじゃん?」と思ってしまうけど、これはあくまでも結果論。出たら出たできっと帰って来られなかった…と信じたい。

「着いたものに乗れ」 ー御蔵島の人々

という言葉が御蔵にはある。御蔵から出る時は、昼の東京行きの客船に乗るのが王道ルートではあるけれど、台風シーズンや冬はこれが使えない。御蔵から島外に出る交通手段を時系列に並べると、

①朝船(八丈経由東京行き)

②午前ヘリ(三宅経由大島行き)

③昼船(上記の通り)

④午後ヘリ(八丈行き)

となるのだけれど、確実に出たい時、出なければいけない時は、③を待たずに②を持っているのならヘリに乗るとか、天候によっては客船より就航率の高いヘリも欠航することもあるから①に乗るとか、そういうこと。よく島の人が、外から来ている人に「昼船ヤバそう(着かなそう)だから朝乗った方がいいですかね?」なんていう相談を受けたりするけれど、みんな答えることは「(確実に帰りたければ)着いたものに乗りなさい」ということ。

 

ちなみに、そうやって、わざわざ朝の船に乗った時は昼も就航することが多いし、逆にそうなると見越して朝船を見送り昼の船狙うと、昼船は欠航する、なんてことが多い気がする。こればかりは自然のことなので、どれだけ予測をしても仕方がない。と思うと、「着いたものに乗れ」という言葉は非常に理に適っている気がする。

 

ちなみに、これに関連して、出島時の予定をパンパンに詰め込むと、出島自体できないことが多い、というのは私が思うジンクス。「この日は○○ちゃんに会って、どこどこ行って、次の日は□□であれを買って…」というのは大概実現しない(私は、ね)。だから出島した時の詳細な予定は無計画の方がいいのかも知れないと思ってしまうのだ。

 

近い将来にYoshiki様に会えますように…。