良い靴が履きたい

♣SATCブーム再び

最近、かつて一斉を風靡したアメリカンドラマ、セックスアンドザシティ(SATC)をシリーズ1から見直している。何で今なんだろう?と思い返してみたが、単にアマゾンプライムでシリーズ全部が見られるようになったからだった。故にそんなに大した理由で見直している訳ではない。

私がこのドラマに最初にハマっていたのは、テレビシリーズが終わったくらいの10年ほど前のこと(リアルタイムより少し遅い)。当時の私は大学院生。アメリカから帰国したばかりで、一丁前に逆カルチャーショックなるものに陥っていて、わざわざアメリカ臭をプンプン撒き散らしながら生活をしていた。向こう発のブランド服を着たり、実際に住んでいた頃には大して興味もなかったあちらのドラマや映画を毎日見たり、会話にちょいちょい英語が混ざったり…と、今こうして活字に起こしているだけで自分の黒歴史っぷりに気絶しそうになる。

そんなちょっと(いやかなり)痛いアメリカかぶれの学生だったので、少し年上のお姉様方がこれでもかというくらいの流行に身をつつみ、NYで華やかに生活するこのドラマにどハマりした。特に影響を受けたのがファッション。

主人公のキャリーは自他共に認めるファッションオタク。特に靴に対しては目がなく、靴の買い過ぎでカードが限度額に達することもしばしば。ドラマの設定、現実ではあり得ないと頭では分かっているつもりでも、やはり真似したい自分がどこかにいて、DVFのラップワンピースを着てみたり、さすがにマノロは買えなかったけど学生が履くにしては良い値段のパンプスを履いたりしていた(確かそれで修論発表会に出た、スーツはユニクロなのに笑)。

今にして思えば、かなり背伸びをしていたのだと思う。その証拠に、当時の写真を見返しても全然似合っていないというか、年上の人の服や靴を借りた感じに写っている。全然自分のものを纏っているように見えないと言ったらいいだろうか。(話は少しずれるけど、アメリカではいわゆるハイブランドが日本ではあり得ないくらいの価格までセールになる。50%とか70%オフとか。だから買えたのね。)

♣手放したDVFやMilly

結局その頃の服や靴はかなり処分してしまったのだけれど、それは似合わなかったという理由ではなく、単に使えなくなったからというところの方が大きい。(再び話はずれるけど、それらの多くは「ブランド売るなら〜♪」のところへ売った。結構着古したのに値段がつくものなんだなぁと驚いたけど、いくつかの商品は日本では販売されていないものだったらしく値段がつけられません、というものもあった。つまりプラマイゼロ。か?)何しろ、ここは泣く子も黙る坂の島。

ハイヒールで歩くなんて絶対無理だし、ちょっと良いワンピースを着た日には「どこにお出かけ?」と会う人会う人に聞かれるに決まっている(この台詞は色々な捉え方ができる)。ここではギョサンにレギンスパンツがデフォルトなのだ(私には)。

しかし、今改めてSATCを見直してみて、自分が主人公たちと同年代になり、やはり処分しないで取っておけば良かったかな、と思っている自分がいる。子どもがほしいのになかなか妊娠できないシャーロットに対して、キャリア最優先のミランダが予期せぬ妊娠。二人は衝突するけれど、結局ミランダは産むことに決め、「私たちの元に赤ちゃんが来るのね」と自分のことのように喜ぶシャーロット。それを見守るキャリーとサマンサ。昔見た時は特に何とも思わなかったこのシーンに号泣せずにいられなかったのは、私自身もそれなりに歳を重ねてきたのだろう、と。つまり、そういう着こなしが似合うのは今なのではないか、と思った訳で。

♣島でも使えるか?

しかしながら、先述のとおり、この島にクラッチバッグを持ってマノロやチュウを履いて、出掛けられる場所もなければ、コスモポリタンを提供してくれるお店もない。友だちが誕生日にくれたエシレのトートを持って、その日の服に合わせたカラーのギョサンを履いて、カンブリで烏龍茶をジョッキで飲むのが精一杯のオシャレ(私はビールが飲めない)。

なんてことを何人かで話していて、「あ!そういうイベントを開ばいいじゃん?」と気付いた。ドレスコードありのパーティーイベント。もちろん準備は自分たちでやるのだけれど。昼間はオードブルやカクテルの準備をして、会場にカーペットを敷いて。ドレスコードはカクテルドレスにハイヒール。一月前くらいに告知しておけば、みんな体も絞ってそこに照準合わせて来るのでは?と。

思い立ったらすぐできるのがこの島の素敵なところ。私が良い靴を履きたいがためだけのイベント。もし実現しそうなら、人生初のJimmy Chooのパンプスを買っても良い?と、現在夫に交渉中。