実家の近くで暮らすということ

出島の悩み

友人には「月イチくらいで東京来るんでしょ?」などと聞かれるが、御蔵から東京に出るのはそう簡単なことではない(御蔵も東京都、というのはここでは置いといて)。単身で出かける場合はまだいいが、夫婦一緒にとなると休みを合わせなければならないし、目的が(所謂出張とかではなく)「遊び」となると、これまた面倒くさい(人の目が)。とまあ、そんな困難?を乗り越えて、年に一度くらいは夫婦二人で出かけていたのだが、数年前から我が家に更に出島のハードルを上げる案件ができた。この方である。

そう我が家の御猫さまこと、ボリスさま。私もかつては、「猫はひとりが好き、留守番もへっちゃら」などというステレオタイプを信じていたのだが、何を隠そう家のボリスさまは大の留守番嫌い猫なのである。彼はどうも夜中に一人にされるのが嫌なようで(猫なのに!)、その証拠に、我々が出かけると台所のシンクをトイレにするという人間にとっては最大級の嫌がらせをするのだ。しかも、帰宅しても数日間はその嫌がらせが続き、「一人にしてゴメンね。ボボちゃんのこと大好きだよ。」と毎日何回も繰り返し言い続けて、やっと機嫌が治るという感じ。

しかし、実はこれよりも私の頭を悩ませる案件がある。

–夫である。

夫の猫に対する溺愛ぶりは、それこそ「猫可愛がり」なんて表現では済まないほど凄まじいのだが、この人は一瞬でも猫に関して不安なことを想像してしまうと、それが頭から離れなくなるのだ。

心配過ぎて…

基本的に、二人とも留守にする時は義母に猫のお世話をお願いするのだが、夫は出かけてから数時間で、様子見と称して義母に電話をかけ始める。それも電話に出るまでかけ続ける。義母が電話に出ないと(当たり前だけど、携帯を不携帯なんてことは誰にでもよくある)、「何かあったんだ…」とパニックになる。「ある訳ないじゃん、今忙しくて出られないんだよ」と諭してもパニックは治らない。気を紛らわそうと、「何食べようか?」「〇〇に行く?」と、楽しそうなことを振っても、夫は無口になる一方。そこへ義母からの折返し電話がきて、「いい子にしてる?遊んでた?良かったー!」となり、やっと落ち着くのだ。電話を切ってから、「寿司食べに行こ!」だと(笑)。キャッシュな奴め。

こうやって文字にして客観的に見ると、微笑ましい(?でもないか)気もするが、この発作が猫と離れている間、毎日起こるのである。こちらにも御猫さま同様、「大丈夫だよ、ちゃんと一人で留守番できてるよ」と繰り返し言い続けていくしかないだろう。大事な家族であることにかわりはないのだから。

協力し合える環境

『学び合い』の西川純先生が、様々なところで書かれていることが、小・中学生の間に伴侶となる人を見つけ、結婚後は実家の近くに住む(必然的に二人の実家近くになる)。そうすれば子育てのサポートも様々な方面から得られる、ということ。これは何も子どもだけに当てはまることではないのかも知れないと最近思う。私の実家は遠く離れているが、夫の実家が近い分、随分と助けてもらっている。夫が大事な猫を安心して任せられるのも、自分の母親だからだろうな、とも感じる。

御蔵では同居しないのが習わしだが、小さなコミュニティだけあって皆がご近所だ。近いからこそ助け合えるというのは、なかなか良いものだなと思う。

ちなみに、今回ボリスさまは、シンクをトイレにすることなく、立派に留守番を成し遂げたそう。良かった、良かった。